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finance2026-07-105分

最大ドローダウンシミュレーター

最大ドローダウン(MDD)の計算とシミュレーション。投資ポートフォリオのリスク測定において最重要となる指標の計算式と応用方法を解説します。


最大ドローダウンシミュレーター


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Photo by Nick Chong on Unsplash

「含み損」の最大規模を知る

投資家が最も恐れるのは、利益の消失ではない。含み損だ。特に、資金曲線が右肩上がりを続けている途中で急降下する——あの感覚は、一度経験すると忘れられない。

私は2021年に株式ポートフォリオで30%のドローダウンを経験した。含み損が膨らむ日々は、朝起きてまずポジションを確認する。食事の味もわからず、眠れない夜が続いた。あのとき初めて、「リターン」だけを見て投資していた自分の愚かさに気づいた。ドローダウンという指標を知らなかった。もし知っていたなら、心理的準備はできたはずだ。

ドローダウンの基本概念

ドローダウンとは、投資ポートフォリオや資金曲線において、あるピーク値からその後の最低値(トラフ)までの下落幅を指すリスク指標だ。100万円から資金が70万円まで減少した場合、ドローダウンは30万円(30%)。投資家の心理的負担や資金繰りに与える影響を測る上で、リターンの標準偏差よりも優れた指標とされる。

最大ドローダウンの計算式

基本計算式

$$MDD = \max_{t \in [0, T]} \left( \frac{\text{Peak}_t - \text{Trough}_t}{\text{Peak}_t} \right) \times 100\%$$

  • $\text{Peak}_t$:時刻 $t$ 以前の最大値(累積最高値)

  • $\text{Trough}_t$:ピーク以降の最小値

  • $T$:観測期間の総数


計算のステップ

  • 資金曲線の構築: 各時点でのポートフォリオ価値を記録

  • 累積最高値の追跡: 各時点で、それまでの最高値を更新

  • ドローダウンの計算: 各点において、累積最高値からの下落率を計算

  • 最大値の特定: すべてのドローダウンの中から最大値を選択
  • 具体例

    | 月 | ポートフォリオ価値 | 累積最高値 | ドローダウン |
    |:---:|---:|---:|---:|
    | 1月 | 1,000,000円 | 1,000,000円 | 0% |
    | 2月 | 1,100,000円 | 1,100,000円 | 0% |
    | 3月 | 1,050,000円 | 1,100,000円 | 4.55% |
    | 4月 | 950,000円 | 1,100,000円 | 13.64% |
    | 5月 | 850,000円 | 1,100,000円 | 22.73% |
    | 6月 | 900,000円 | 1,100,000円 | 18.18% |
    | 7月 | 1,050,000円 | 1,100,000円 | 4.55% |
    | 8月 | 1,150,000円 | 1,150,000円 | 0% |

    5月に最大ドローダウン22.73%。ピークから22.73%下落し、8月にようやく回復。3ヶ月間、資金がピークを下回り続けた。

    回復期間とドローダウン期間

    回復期間とは、ドローダウンが発生してからポートフォリオ価値がピークに戻るまでの時間。心理的・財務的に最も苦しい期間を表す。

    $$\text{Recovery Period} = t_{recovery} - t_{trough}$$

    ドローダウン期間は、ピークから始まり完全に回復するまでの全期間。

    $$\text{DD Duration} = t_{recovery} - t_{peak}$$

    Calmar Ratio

    $$\text{Calmar Ratio} = \frac{\text{年率リターン}}{\text{最大ドローダウン}}$$

    この比率が高いほど、リスクに対して良好なリターンを提供している。Calmar Ratioが1.0以上のファンドは優れた運用成績と評価される。

    ドローダウンの心理的影響——ここが一番つらい

    行動経済学の研究によると、人間は同等の利益よりも損失を約2倍の重みで認識する。損失回避の心理だ。20%のドローダウンは、同等の20%の上昇よりもはるかに大きな心理的負担をもたらす。

    回復に必要なリターン——非線形の恐怖

    | ドローダウン | 回復に必要なリターン |
    |:---:|---:|
    | 10% | 11.1% |
    | 20% | 25.0% |
    | 30% | 42.9% |
    | 40% | 66.7% |
    | 50% | 100.0% |
    | 60% | 150.0% |
    | 70% | 233.3% |
    | 80% | 400.0% |

    50%のドローダウンからの回復には100%のリターンが必要。つまり、資金を2倍にしなければ元に戻らない。損失の回復がいかに困難か。これが、ドローダウンを理解すべき最大の理由だ。

    実用的アプリケーション

    投資ファンドの評価

    投資ファンドの評価において、最大ドローダウンはリターンと同等に重要だ。ヘッジファンドや自動売買システムの評価では、シャープレシオ、Sortino Ratio、Calmar Ratioと組み合わせて使用される。

    資金管理への応用

    $$\text{ポジションサイズ} = \frac{\text{資金} \times \text{許容MDD}\%}{\text{1トレードあたりの最大損失}}$$

    最大許容ドローダウンを設定し、それに基づいて各取引のリスク額を決定する。資金管理の実践的な方法だ。

    まとめ

    最大ドローダウンは、投資のリスクを測定する上で最重要指標の一つだ。単純な計算式でありながら、投資家が直面する「最も辛い状況」を正確に表現している。ポートフォリオを評価する際には、リターンだけでなく、必ず最大ドローダウンも確認すること。あの30%ドローダウンの経験がなければ、私はこの記事を書けなかった。MDDを知ることは、投資家としての生存戦略を知ることだ。