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finance2026-07-105分

マーチンゲール計算機

マーチンゲール法の期待収支、破産確率、資金曲線をシミュレーションする計算ツール。ギャンブリングと投資における期待値とリスクを数式的に解説します。


マーチンゲール計算機


arcade machine with lights turned on inside room

Photo by Kvnga on Unsplash

「負けるたびに2倍」——美談の裏

マーチンゲール法。18世紀にフランスで流行したベット戦略。原理は極めて単純だ。負けるたびにベット額を2倍にする。一度でも勝てば、それまでの損失をすべて回収して利益を得る。このロジックを初めて聞いたとき、私は心の底から「やった」と思った。カジノを攻略できる。そんな夢を見た。

実際、友人のMさんはカジノでマーチンゲール法を試した。最初の数回は思った通りに機能した。小さな勝ちを繰り返し、資金は右肩上がりだった。しかし、7回目の連敗。ベット額は2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、128倍に膨らみ、128,000円を一度に失った。それまでの利益をすべて吐き出した上で、さらに大赤字。「理論上は完璧なのに」と、Mさんは茫然としていた。

基本公式と累積ベット額

ベット額の計算

$$B_n = B_0 \times 2^n$$

$B_0$ は初期ベット額、$n$ は連敗回数だ。

| 連敗回数 (n) | ベット額 (B₀=1,000円) |
|:---:|---:|
| 0 | 1,000円 |
| 1 | 2,000円 |
| 2 | 4,000円 |
| 3 | 8,000円 |
| 4 | 16,000円 |
| 5 | 32,000円 |
| 6 | 64,000円 |
| 7 | 128,000円 |
| 8 | 256,000円 |
| 9 | 512,000円 |
| 10 | 1,024,000円 |

たった10回の連敗で累計ベット額は102万4000円。指数関数的な増加——これぞマーチンゲール法の最大の罠だ。

累計ベット額

$$S_n = B_0 \times (2^{n+1} - 1)$$

$B_0 = 1,000$円で10回連敗すると:

$$S_{10} = 1{,}000 \times 2{,}047 = 2{,}047{,}000 \text{円}$$

204万7000円。10回の連敗でこれだけの資金を消耗する。

破産確率の計算

数学的定式化

二択ゲーム(勝率50%、ペイオフ1:1)を前提とすると、資金上限 $Z$ を持つプレイヤーの破産確率 $P_{ruin}$ は:

$$P_{ruin} = \left(\frac{q}{p}\right)^{Z/B_0}$$

公平なゲーム(p = q = 0.5)の場合:

$$P_{ruin} = 1$$

資金が有限である限り、最終的には必ず破産する。ドゥベの定理——公平なゲームでマーチンゲール法を用いると、確率1で資金を失う。Mさんの経験は、まさにこの定理の実演だった。

実践的なシミュレーション

カジノにはベット上限が設定されている。連敗回数 $k$ でベット上限 $M$ に達し、それ以上ベットを増額できなくなる。

$$P_{ruin} \approx \frac{100{,}000}{1{,}000} \times 0.5 = 50$$

この値が1以上なら、ほぼ確実に破産する。

期待値の分析

1ラウンドあたりの期待収支

$$E = B_0 \times p - \sum_{k=1}^{n_{max}} 2^k \times B_0 \times q^k \times p$$

公平なゲームでは:

$$E = 0$$

期待値はゼロ。マーチンゲール法は期待値を変えることできない。これは、マーチンゲール法の最も残酷な真実だ。

資金曲線の特徴

「小さな利益が頻繁に発生し、時折大きな損失が発生する」。負の歪度(ネガティブスキュー)。いわゆる「拾う銭は小銭、落とす銭は大金」の分布。

| 統計量 | 値 |
|---|---|
| 1ラウンドの平均利益 | $B_0$ |
| 標準偏差 | $\approx B_0 \times \sqrt{2^{2n_{max}} - 1}$ |
| 最大損失 | $\approx 2^{n_{max}} \times B_0$ |

金融市场での応用——ナンピン平均

株式や暗号通貨の価格が下がるたびにポジションを増やし、反転時に回収を図る。マーチンゲール法の金融版だ。成功する条件は:

  • 資金の余裕: 十分な資金がなければ、追加ポジションを維持できない

  • ボラティリティ: 市場の変動が大きいと、期待される反転が訪れないことがある

  • 時間コスト: 長期間ポジションを維持すると、資金効率が低下する


リスク管理の教訓

マーチンゲール法が教える最も重要な教訓は、「負けるたびにリスクを増やすことは危険である」。適切なリスク管理では、損失が発生した場合はポジションを縮小し、勝っているときにのみリスクを拡大すべきだ。これは「アンティ・マーチンゲール」と呼ばれる。マーチンゲールの逆。负けたら引き、勝ったら攻める。这才是正しいリスク管理だ。

まとめ

マーチンゲール計算機は、この古典的な戦略のリスクと収益性を把握するためのツールだ。数理的な分析が示すように、マーチンゲール法は資金が有限である限り、長期的には破産のリスクを伴う。Mさんのように、カジノで痛い目を見る前に、計算機を動かしてみることだ。期待値と資金管理の関係を正しく理解することが、賢明な意思決定の第一歩となる。